Skip to Content

VFX-JAPAN、キックオフ!

今やコンテンツクリエイションに欠かせないVFX技術を産業として遍く認知させ、業界の活性化を図るための団体、「VFX-JAPAN」がついに始動する。本誌読者にはまさに“釈迦に説法”となるが、VFXとはVisualEffects(ビジュアル・エフェクツ、視覚効果)の略で、映画やTV、CM、GAME、PVなどの制作において、現実には見ることのできない画面効果を実現するための技術のことを指す。巷では、CG、デジタル映像、SFXなどと同義に扱われているケースも多いジャンルだが、欧米の映像制作システムによる職種別けとしての呼称としては、撮影現場での特殊効果をSFX(Special Effects、 特殊効果)と呼ぶのに対し、撮影後のポストプロダクション段階にまで及ぶ特殊効果をVFXと別けている。米国にはVES(VisualEffectsSociety※http://www.visualeffectssociety.com/)と呼ばれる協会が組織され、ハリウッドの一流のVFXスーパーバイザーを始め、この業界に従事する国内外も含めた約2000名を超えるメンバーが在籍している。また、アメリカのアカデミー賞にはアカデミー視覚効果賞やアカデミー科学技術賞があり、VFX技術者への認知、評価は高い。ところが日本アカデミー賞に視覚効果賞はなく、我が国でのVFX技術者に対する認知、評価は低い。こうした現状に立ちあがったのが「VFX-JAPAN」の代表を務める秋山貴彦氏だ。自らがVFXスーパーバイザーであり、監督でもある秋山氏に、この「VFX-JAPAN」とはどういう団体で何を目指すのか話を聞いた(以下敬称略)。

 

代表発起人の秋山氏を囲んで、設立に向けてのミーティングの様子

 

発足に至るまでの経緯を教えていただけますか?

 

秋山:日本の映像技術には伝統的に特撮という文化があり、その中でもいわゆる視覚効果という技術がコンピュータの導入とともに進化を遂げ、特殊なジャンルとしてVisualEffects=VFXと呼ばれるようになりました。今日のハリウッドの大作映画における目を見張るそのVFXが、大ヒット作の魅力を陰で支えていることは周知の通りです。また、TV、CM、ゲーム、PVなどの映像表現においてもCG・VFXは欠かせない映像要素となっており、こうした背景には、この業界に携わる多くのクリエイター、プログラマー、プロデューサー、ソフト及びハードウェアベンダーなどの人々の弛まぬ努力と技術の発展の歴史があったと言えます。しかしながら日本には、脚本、撮影、照明などと同じく映像制作に欠かせない技術、パートでありながら、こうした職種を営む技術者や関係者に特化した団体はありませんでした。私は2007年に渡米しその二年後にVESの会員となり、その活動に参加する機会を得ました。その後ある方からVESの日本支部のような組織を作ってはどうかというお話を頂き、それ以来日本でこの業界の関係者の方々にいろいろとご意見をうかがうようになりました。私自身この業界に20年以上関わっていながら日本にそのような団体がないことに改めて気づかされただけでなく、特にご意見を頂く内に感じましたのは、今日の日本の業界が様々な問題を抱えているということでした。こうしたことを聞き、知るにつれ、そのような問題を一つ一つ解決していくには、この業界の方々の横のつながりや連帯感を強め、業界活性化に向かうための様々な問題点を論じあえる場を作ることが必要であり、そのための組織としてVFX-JAPANの発足が急務であると考えるにいたったのです。

 

この業界の現状について教えてください。

 

秋山:世界的な構造不況の中で、映画、TV、CM、ゲームなど映像に関連したエンターテイメント産業も大きな打撃を受けています。しかしながら、そうした状況におきましてもコンテンツ産業、中でもデジタルコンテンツ産業と言われる分野に関しては我が国における未来を支える成長産業として特にその動向に関心が集まっています。とはいえ注目されながらも具体的な発展を促す政策、支援に関しては未だ模索中であるといえるのではないでしょうか。現在、国内商業映像の制作費の下落は歯止めを知らず、そのためには海外からの外貨の獲得に活路を見出したいところです。ところが、その際の大きな問題点として、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどが行っているような税制優遇措置や助成金制度が日本にはないことが挙げられます。このためにハリウッドからの仕事が日本をスルーし積極的な政策を行っている諸外国に流れていってしまっています。デジタルコンテンツを生産する技術的なノウハウや基盤技術の多くは、VFX技術者によってもたらされています。しかし実際のCG/VFX映像を見た一般の方々には、その陰に隠れた技術者の功績や努力といったものが中々伝わりません。そればかりかそうした映像には全く人間の作業が介在せずまるで機械や道具が勝手に作ったもののような印象さえ持たれている傾向にあります。優秀なVFX職人になればなるほど、そこに人の手が介在していることを感じさせない自然な映像を作るものです。それはまさに職人芸であり彼らの存在はそれ故に縁の下の力持ちになっているのです。このように認知されない、ゆえに評価もされないという状況の中で日本国内の優秀な人材が海外にどんどん流出してしまっていることも事実です。私が最も危惧しているのはこうした状況の中、この業界に夢を抱いてやってくる若者が先細りしてしまうのではないかということです。若者が入ってこない業界に未来はありません。

 

ハリウッドからの仕事を獲得するためのTAXインセンティブへの働きかけ、国内のCG/VFX制作費の適正化、正当な評価、功績を称えることにより優秀な人材の海外流出を食い止め、若者に夢を抱かせる魅力的な業界作り。。。問題、課題が山積ですね。中でも最もプライオリティの高い課題は何でしょうか?

 

秋山:出来ることを順番に少しずつクリアして行くしかないのですが、例えば、こんなこともあります。VFX技術者やCGプロダクションがその技術を知らしめ、宣伝を行うには、VFXデモリールというものを作る必要があります。実際にCGやVFX技術を使っている完成映像のカットと合成以前の素材などを並べたメイキング映像なのですが、このデモリールをVFX技術者やプロダクション自らが自由に活用できないという問題があります。つまり“この視覚効果は私、またはウチの会社で作った”と営業用に使用したい場合にも、版権元からの許諾が中々おりない状況が多々あると聞いています。諸外国では「その映像を販売するのではなく、プロダクションの営業目的用に使用する際には、権利者の名前を明記した上で、プロダクションが制作に関わったその一部の映像使用、並びにメイキングの公開を許可する」ということが認められる慣習があり、それによってプロダクションのデモリールなどでの映像使用が許可されています。ところが日本では大手のタレント事務所さんとの力関係(これも製作会社との契約内容によるのですが)により、役者の写りこんでいる映像や有名なキャラクターなどの素材(場合によってはその作品すべて)をメイキングビデオなどに収録できず、デモリールの閲覧は社内のみといった形で、外部への営業ツールの作成に苦慮しているプロダクションが少なくないようです。特に海外での営業の際にWeb上でデモリールやメイキング映像が使用できないというのは厳しいと言わざるをえません。この状況を少しでも改善するには、日本でも諸外国のように制作を担当するプロダクションが営業目的で使用する著作物に関するガイドラインを業界標準で作るべきではないかと考えております。それにはまず業務を委託した際の契約書の中で一文を明記するということで版権元との合意が図れるのであればそのような取り決めを盛り込んでおくとか、目に見えない物を一から作り出しているクリエーターの方々の重要性を世間的にもっと認識してもらい、その方々が作り上げたものに関しては、せめて自分達が作ったのだということを宣伝できる権利を認めてもらえるような啓蒙活動などを行っていく必要があるのではないかと思います。

 

これまでお聞きしてきた問題、課題は個人、一社では解決しにくいということですね?

 


(c)2005 HINOKIO FILM VENTURE
秋山氏の代表作「HINOKIO」のワンシーン

 

秋山:その通りです。それには、あるまとまった人数である組織を結成する必要があり、そもそもこうした諸問題を一つ一つ解決していく方法や手段を模索した結果「VFX-JAPAN」という団体を発足させようと考えたのです。

 

「VFX-JAPAN」の具体的な活動内容は決まっているのですか?

 

秋山:現在、このような考えにご賛同頂けるクリエーター、プロダクションの方々と定期的な会合を持ち、議論しているところです。テーマは、具体的な活動内容、分科会、イベント、会費、会員メリット、協賛・運営制度、など多岐にわたっており白熱した議論を行っています。様々な問題を対処する上で乗り越えなければいけない壁の厚みを感じることも多々ありますが、会を重ねるごとに参加されている皆さんが、それぞれ危機感を持って何かを変えたいと思っていらっしゃることが感じられ心強く思っています。こうした活動を続けていくには、この業界に携わる皆様のご賛同とご尽力が不可欠ですので、これからも様々なご意見を頂戴しながら発足に向けての準備を整えたいと思っております。

今、ほぼ確実に決定している事項としましては、この10月23日(日)文京学院大学ホールにて行われるCG-WORLD クリエイティブカンファレンスの中で午後5時半から80分の枠を頂き、「VFX-JAPAN」宣言というイベントを行います。ここで「VFX-JAPAN」の発足に向けての宣言を行うとともに第一線で活躍中のVFXスーパーバイザーの方々にお集まりいただき協会設立の意義などについてご意見を伺う予定です。また同月27日(木)に六本木ヒルズ森タワー49Fオーディトリアムで行われる「UNIJAPAN ENTERTAINMENT FORUM」でこちらも午後7時から(開場は午後6時半)1時間半にわたり「VFX-JAPAN」キックオフミーティングを開催します。これは、とかくブラックボックスになりがちなVFXに焦点を当て、その作り手の立場で過去から現在に至る日本の特撮、CG、VFXの歴史を振り返り、その未来を読み解くトークセッションになる予定です。こちらも第一線で活躍されている監督、VFXスーパーバイザー、プロデューサーを一堂に集め、シンポジウムを行います。また会場でのデモリールの上映も検討中です。皆様、是非お越し下さい。

 

秋山貴彦(あきやま たかひこ)
VFX-JAPAN 代表発起人
映画監督・VFXスーパーバイザー
(株)4Dブレイン 代表取締役

http://vfx-japan.com/