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第17回産業用バーチャル リアリティー展

今必要とされるバーチャルリアリティのソリューション

 2009年6月24~26日、1640の参加企業が集う日本最大級の展示会、産業用バーチャルリアリティ展(以下 IVR)が開催された。

 バーチャルリアリティ(以下 VR)の誕生は1940年代とも言われ、現在に至るまで様々な分野で利用されているが、昨今のハードウェアとアプリケーションの進化により、VRシミュレーションにより試作品の制作点数を減らす等のコスト削減を目的として、産業界向けVRに注目が集まっている。

 この展示会では、この必要性に対するそれぞれの回答を持った企業が多く参加していたが、特に目を引いたのは、株式会社クレッセント(以下 クレッセント)のブースに設置されたVR製品群であった。

 

展示会初日にもかかわらず、多くの来場者が立ち寄り報道機関も詰め掛けたクレッセントブース。

 

優れた海外製品を組み合わせたクレッセントVRソリューション

 クレッセントは2つのVRソリューションをブースで展示し、実際に多くの来場者や報道関係者が体験していたがその1つに、CGで制作されたビルの縁を、実際に歩く高所恐怖症シミュレーションがあった。

 これは株式会社 ヴァーチャル・アイのウェアラブルディスプレイHEWDD(以下HEWDD)とモーションキャプチャカメラ VICON MX(以下 VICON)を組み合わせ、ダッソー・システムズ社の3DVIA VirtoolsによりCGで再現されたビルの中に入り込み、その避難経路をシミュレーションするシステムだが、コンテンツ的にはビルの縁を歩く事ができそのリアル度に足が竦んでしまう程のリアリティがあった。システム的なクオリティはもちろんだが、靴にトラッキング用のマーカを付けることで、足元の動きデータが取り込まれる工夫がリアリティ性を一層高めている。

 

クレッセントが展示した高所恐怖症シミュレーション。左がHEWDDを通じてみているシーン。ビルの縁に靴が見えると思うが、このスタジオにはVICONを8台設置し、足にマーカ付の靴を履くことで(写真中央)動きをキャプチャしている。写真右のようにHEWDDを被って歩くと、まさにビルの縁を歩いているように感じ、かなりの恐怖感を体感できる。

  

 もう1つのシステムは、VirtoolsVICONHEWDDに加え体験者の体を4DView Solutions(以下 4D View)という特殊なカメラでキャプチャし、その形状データも合わせVRとして体験できるシステムであった。

 展示されていたVRコンテンツは、自動車に乗って内装やハンドルまでの距離、カーナビの操作や運転までを仮想空間の中で体験するものだが、自分の手が視界にリアルタイムで現れるため、ハンドルとの距離感やシートの形状や柄を含め体感が得られる。

 このシステムの構成を簡単に説明するとVICONで体験者の動きをキャプチャし、4D Viewによりその場にいる人の形状データをリアルタイムで3Dモデルとして取り込みながら、HEWDDで仮想空間を見せる。VRコンテンツはVirtoolsで作成されているため、カーナビの画面を押すと映像が表示されるなど、リアルタイムで反応するアクションが組み込める。これらの4製品を連携して実現した没入型のVRだが、既存のVRと比較してもクオリティはもちろん体感で得られる感触も遜色はない。また、このシステムの特徴として実際に体験している人だけではなく、モニタを通じ実際にVRの体験状況はゲームコントローラなどを使用して、アングルを変えてみることも可能であるため、第三者的に検証を行なえる。

 ここまでの内容を見ると、大掛かりなシステムに思えるが、大型プロジェクターやVR用の部屋を用意する必要があないため、非常にスリムでメンテナンスも容易なシステム構成になっている。

 

クレッセントブースで実演されたVRスタジオ。グリーンバックの上にVICONカメラ(8台)と4DViewのカメラ(8台)が設置され、動きのデータと体験している人のモデルがリアルタイムで取り込まれる。その動きをVRコンテンツにあわせる事で、体験している人はHEWDDを通じVRを体験し、さらにモニタを通じウェラブルディスプレイを付けていない人も、写真右のように体験者の利用状況を確認する事ができるため、第三者的な視線からも検証ができる画期的なシステムとなっている。   

 

 

 クレッセント モーションキャプチャスペシャリストの鈴木氏にこのVRシステムについて聞くと、スリムで容易性が高い点以外にも、オフライン(レンダリングを行ない制作されたコンテンツ)までのフローも可能な構成であることがわかった。

 

クレッセントモーションキャプチャスペシャリスト
鈴木理之(すずき ただゆき)氏

「このシステムは、必要に応じ設置することができるので、ある程度のスペースがあれば常設でなくても、VRスタジオとして設置ができる柔軟性があります。今回はリアルタイム性を主として紹介していますが、D VIEWのカメラは最高80台まで設置でき、台数を多くすると精度はもっとあがりますので、D VIEWのカメラで撮影された人の動きと形状データを取り込んでおいて、ポスト処理の工程で3DCG用モデリングとして使用することも可能です。リアルタイムに動きと形状データを取り込むことのできるこのシステムは、リアルタイムシミュレーション用のVRとしてご利用いただいた上に、ポスト処理としてクオリティが必用なコンテンツ制作までサポートする新しいソリューションです。」

 クレッセントが用意したVRシステムにおいて、コンテンツ制作に採用されたのはVirtoolsだ。クレッセントはこの製品が持つ柔軟な開発環境と幅広い入出力フォーマットを使うことで、クオリティの高いVRコンテンツ制作が可能であると語った。

 

Virtoolsで実現するクオリティの高いVRコンテンツ

 VRコンテンツの課題は、映像としてのクオリティ以外にデータの正確性とコンテンツに組み込まれたアクションがシミュレーションに値するかが上げられる。クレッセントでは、VRソリューションの核としてVirtoolsを据えているが、それはVirtoolsがこの課題をCADデータとの高い互換性と柔軟な開発環境により達成できるためである。

  

▲クリックすると拡大します。

(3dvia virtoolsのワークフロー)

  

 精密なシミュレーションを行なうためにCADデータを利用するケースが増えているが、Virtoolsは、ダッソー・システムズ株式会社が開発しており、3DXMLを始めAutoCADPro|EngineerAutodesk MayaAutodesk Maxなどの3DCG製品までも高い精度でサポートしている。

 このような豊富な入力に対し没入型ディスプレイ、モバイル、Webブラウザなどの出力にも対応し、データの入り口と出口をしっかりと固めている。

 さらに既存のリアルタイム3Dツールと差別化される大きな要因としては、プログラミング機能の搭載が挙げられる。リアルタイム3Dを必要とする場合、インタラクティブにシミュレーションを行ないたいとか、角度を変えながら質感を含め全体イメージを掴みたいというアクションも合わせ検証したというリクエストがあるが、他のリアルタイムツールの多くはその自由度に制限がかかってしまう事が多い。

 しかし、Virtoolsはプログラミング機能を持つ事でリクエストに応じたアクション設定が構築できる。このプログラム環境にはフローチャートを作るように順番につなぐだけの簡易的なものから、スクリプトやSDKを使った開発まで幅広く用意されているため、内容に応じて使い分けが可能となっている。

 コンテンツ制作面として、リアルタイムにおける映像クオリティもポイントになるがこの点でも4K解像度をリアルタイムに表示でき、CgFXシェーダを搭載するなど、高いクオリティを出す事も可能だ。

 Virtoolsは対応フォーマットの多様性と、自由度の高さそして映像クオリティと全ての面において、これからのVRコンテンツの核となる資質を備えたアプリケーションといえる。

 
Virtoolsは扱いやすいインターフェイスになっており、習得にはそれほど時間もかからない。また、CgFXによるクオリティの高いシェーダ設定も可能であり、クレッセントではシェーダライブラリとして定評のあるthe shaderfarmも利用できる。

 

“LINK-ALL”プロジェクトで点と点から面を描くワークフローを提供

 2009年のIVRではクレッセントが新たなる戦略提案していると感じた。今までクレッセントは自動カメラトラッキング・マッチムーブソフトウェアのboujou(ブージュー)、VICONなど多くのユーザに最先端の製品を、海外から日本市場に紹介していた。しかし、今回のIVRではそれぞれの製品がエンジニアリングとしても連携しより大きく、そして幅広い分野へ活用できるストーリが見られた。この変化の理由について、クレッセント 代表取締役 社長 小谷 創氏に聞いてみた。

 

クレッセント 代表取締役社長
小谷 創(こたに はじめ)氏

 「今まで私たちは商社的に、海外の良い製品を日本に向けて発信してきました。しかし、boujouからVICONにつながり、さらにMassiveの群集シミュレーションへ動きの情報を与え、Dlightでレンダリングを行なう一つのワークフローを提供できました。しかし、この段階ではまだ、製品という点をつないだ線の状態です。この線から今度は面にするために“LINKALL”プロジェクトを提案しています。このプロジェクトで中核になるのは、Virtoolsです。DlightでレンダリングしたきれいなテキスチャをVirtoolsで再現し、ウェラブルディスプレイ(HEWDD)でその映像をみて、VICONで動きのトラッキングをし、DVIEWでモデルデータを取り込むという、全てが連携するワークフローを提供できます。

 

 しかし、この面をより強固にまた企業様のリクエストに対応するためには、システムインテグレートではなく、Pluginなどの開発が必要になります。私たちは、この開発をイメージエンジニアリングと呼び、自分たちで様々な製品をエンジニアリング力でつないで、必要なソリューションとワークフローを提供する “LINKALL”プロジェクトを展開していきます。」 

 

 景気が減速している今、ソリューションの組み合わせでコスト削減をして乗り切る時代になっている。しかし、その組み合わせの検証や評価は困難であり、またその労力には隠れたコストが付きまとい、却ってコスト高になるという現象も起きている。

 しかしながら、クレッセントの“LINK-ALL”は、企業にとって必要なピースを揃え、最適なシステムとしてカスタマイズまで担うため検証や評価などの労力を最小限に留めることが可能となる。

 “LINKALL”プロジェクトは、コスト削減と顧客が必要なVRソリューションを最適なフローとシステムを連携させる、今の産業界においてもっとも必要とされるソリューションといえる。

 

会社名:株式会社クレッセント

会社住所:東京都中央区築地4-3-8 登喜和ビル4F

会社概要:1999年3月の設立以来海外より先進のビデオ・オーディオ機器をいち早く輸入し、プロフェッショナル、プロシューマゾーンを中心に販売し、モーションキャプチャシステムにおいて日本での先駆者的存在となった。10年を超える海外の開発メーカとの連携と日本市場への販売戦略の経験を元に、産業用VRシステムを構築し新たなるソリューション提案“LINK-ALL”プロジェクトを2009年より展開する。

 

* この記事、会社情報は2009 年6 月の取材構成を基に構成されています。その後変更となっている場合もございますのでご了承下さい。