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Vol.015 Panasonic業務用360度ライブカメラ


Panasonic “AW-360B10”(左)と“AW-360C10”(右)

当初、360 度映像は、エンターテインメント性の強い特殊なコンテンツの作成が主戦場になると思っていたが、現在では日常的にインターネット上で当たり前の様に 360 度映像を目にすることが多くなった。今回、そうした 360 度映像制作デバイスとして Panasonic の360 度ライブカメラヘッド“AW-360C10”とカメラベースユニット“AW-360B10”をお借りすることができたので、その試用時のファーストインプレッションを記したい。

■360 度カメラシステム
Panasonicの360度ライブカメラヘッドである“AW-360C10”の特徴は、水平4方向に4つのカメラを備えたカメラヘッドで、それぞれのカメラ部は1/2.3 インチ MOS(約1276万画素)と魚眼レンズで構成されている。カメラの最低被写体照度は 約6lx(SS 1/30・Gain 30dB)である。
そして、このカメラヘッドと専用のカメラベースユニット“AW-360B10”を組み合わせる事で、360度のVR映像を 非圧縮 4K 30pで出力することができる。カメラヘッドとベースユニットの接続は、4 本のHDMIケーブル、そしてカメラ制御用のカメラヘッドオプションケーブルで行う。“AW-360C10”と“AW-360B10”は、両機器ともにその本体に撮影に関係する操作部分は無く、LAN 経由で Web ブラウザを使った設定画面を開くマルチプラットフォーム仕様になっている。そのため、タブレットなどでの制御も可能で、詳細な設定をできる一方、制御端末を簡素化できる。

■セッティングと使用方法
さて利用方法だが、接続こそ HDMI を4本使うなど大がかりだが、実際の使用は簡単だった。それを実現させているのが高精度な「リアルタイム動的スティッチング機能」と4 カメラの自動制御。一般的に2つ以上のカメラを利用した360 度カメラは、カメラ同士の映像の継ぎ目となる部分の合成作業を行う必要がある。これをスティッチングというが、“AW-360B10”では、継ぎ目にある被写体を自動検知して、結合部が分からないようにスティッチング位置を最適な位置に常時変更するという機能を備えている。それが「リアルタイム動的スティッチング機能」だ。さらに、4 つのカメラの露出やホワイトバランス設定も自動制御され最適化されているので、基本的にオートで任せても違和感のない360 度映像を得られる。そのため、ケーブルを繋いで電源を入れれば、ユーザーとしてはこの360 度カメラシステムに対して行う事は殆ど無い。それほどに、簡単にセットアップできてしまう。勿論、Web ブラウザを使った制御コンソールから、マニュアル設定も可能でスティッチング範囲や露出・ホワイトバランスを調整する事ができる。これらの処理を、4K 30p の出力でリアルタイムに行うことで、低遅延の 360 度ライブ配信を実現している。無論、全く遅延がない訳ではないのだが、配信を目的とする場合、ライブストリームに変換する時間の方が遥かに大きいため、このシステム内での遅延は殆ど問題にならないだろう。

■360 度映像の記録
ところで、“AW-360C10”+“AW-360B10”のシステムは360 度ライブ映像を得ることが目的なので、本体に録画機能は備えていない。カメラヘッドにもベースユニットにも SDカードスロットが備わっているが、これらはファームウェアアップなどのメンテナンス用スロットであり、録画する機能は無い。今回のテストでは、ベースユニット“AW-360B10”を HDMI ケーブルでATOMOS のSHOGUN(初代)と接続し、4K 30p の映像を記録することにした。さらに SHOGUN のHDMI 出力から 4K テレビに接続し、“AW-360C10”の映像をリアルタイムにモニタリングした。狭い室内のテストで照明も暗かったが、明るく綺麗な「2:1 正距円筒図法形式」の4K 映像を得ることができた。この形式は、一般的な 360 度カメラでの出力形式だ。「リアルタイム動的スティッチング機能」の効果も高く、カメラの周りを歩いてグルグル回っても、継ぎ目が分からない程に自然に繋がっている。意地悪なテストとして、カメラに極端に近寄ってみると、流石に継ぎ目で映像が破綻しているが、0.5~1m 前後も離れると自然なスティッチングが行われていることが分かった。

■360 度映像のアップロード
さて、録画した映像は、そのままでは4 つのカメラの画がグニャグニャと繋がっただけの見づらい画面でしかないので、本来の姿である360 度映像化をしてみた。私にとっては、これが360 度映像制作初体験であったので、日頃視聴する機会も多いYouTube の 360 度映像のプラットフォームを利用して、「2:1 正距円筒図法形式」4K 映像の 360 度化を試みた。YouTube に360 度映像をアップロードする場合は、アップロード前に当該映像が360 度コンテンツである事を特定させるための360 Video Metadata を埋め込む必要がある。幾つか専用アプリが用意されているので、私は“Spatial Media Metadata Injector”を使って360 度映像用メタデータを埋め込んで YouTube にアップロードした。アップロードから数分で 360 度化の処理が終わり、パソコンやスマホ画面で360 度表示となった映像を視聴することに成功した。元映像が4K であるため、フルHD 解像度のモニターで視聴すると、当然ながら フルHD以下の解像度になってしまうが、スマホぐらいの画面サイズで視聴するなら、十分な画質になっている。

■まとめ
360 度映像の視聴環境は、専用のVR ゴーグルだけでなくスマートフォンやYouTubeなど、既に身近なプラットフォームで試聴できる環境がある。360 度映像を記録できるデバイスも次々に登場しており、低価格化とカジュアル化も進み、360 度映像は既に身近で当たり前のコンテンツと言える。そうした中で、業務配信に対応する“AW-360C10” と“AW-360B10”による360 度ライブカメラシステムは、生配信と親和性の高いコンテンツの価値を高め、スポーツ中継やライブイベントなどの配信のあり方、見せ方を変えていくかも知れない。このようにハードウェアと配信プラットフォームは着実に整いつつある。あとは、この360 度映像配信を、確固たるコンテンツの1 つに位置づけられるかは、我々制作者側のアイディアと努力次第であろう。(宏哉)