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Vol.012 SONY FS7 IIファーストインプレッション


Super35mm で4K 60p 収録対応ながら、コンパクトで使い易く纏まったボディ。

初代SONY PXW-FS7 は、一見するとそのシネマカメラライクな形状からENG 的な使い方は難しいカメラかと思われた。しかし、カメラコントロール系のユーザーインターフェイスが従来のENG スタイルを踏襲していたり、ショルダーマウントに適した“VCT-FS7”や拡張ユニット“XDCA-FS7”との組み合わせによって、むしろ4K ENG を身近にした機種だと言える。 その FS7 の後継モデルとなる 「FS7 II」*をお借りする事が出来たので、そのファーストインプレッションをレビューしたい。
■はじめての FS7 シリーズ
初代FS7 が出た当時、実は一度予算組みをして個人的に導入しようと真剣に考えていた時期があった。結果的にその予算はHDCAM を購入する資金に流れてしまったのだが、FS7は久々に心ときめいたカメラであった。
しかし、残念ながらその後は公私ともに FS7 で撮影をする機会は無く、4K での撮影と言えば PMW-F55―という仕事しか回ってこなかった。その為、FS7 シリーズをじっくり触るのは、今回のFS7 IIが初めてとなる。
初代FS7 と比較してのレポートが多い中、私のレビューは「初めてのFS7 シリーズ」という事になるので、初代で既に実装してた機能も新鮮に扱う。

■担ぎ心地
通常のENG カメラやハンドヘルド型に慣れていると、奇抜なシネマカメラスタイル(?)の形状に最初はたじろぐ。グリップがレンズやカメラ本体から離れている事に不安を覚えてしまう。しかし、いざ担いでみると自分がホールドしやすい位置にグリップを持ってくる事ができ、しっかりと右脇を締めてカメラを担げるため、案外安定するスタイルだった。
FS7 IIでは、グリップアームの伸縮がネジ式になり長さ調整が簡単になった。初代はコインが必要だったようだ。
そのアームの先に取り付けられているグリップには、REC ボタンを始め、ズームシーソーやユーザーアサインボタン、ジョイスティック、ダイアルなどが集約されており、右手だけで多くの操作が可能になっている。グリップ形状は、エルゴノミックデザインで握りやすい。個人的には更にグリップベルトが備わっていれば安心してカメラを担げると感じた。
この奇抜なカメラ形状は合理的で、担いで撮影する上で違和感は無かった。ただし、床やテーブルの上にカメラを置く際は、グリップ部分が邪魔になって素直に置けないのが何とももどかしいと感じた。

■電子式可変ND フィルター
FS7 IIでは、現在SONYの独壇場ともなっている電子式可変ND フィルターを搭載している。こちらは下位モデルの PXW-FS5 から搭載された機能で、ND フィルターの濃度を1/4 から1/128 までシームレスに変化させる事ができる。これにより、アイリスを固定―つまり被写界深度を変えずに最適な露出調整をできることになる。Super35mm の大判センサーを載せているカメラでは、被写界深度を活かす機会も多い為、可変ND フィルターとの組み合わせは非常に相性が良く、また必須とも言える機能だろう。
またENG ロケ的な考え方では、明るさが大きく変わる屋外から屋内あるいはその反対の移動ショットの際に、従来ならば途中でND フィルターを回して、そのターレット枠が映り込んでしまう所を、可変ND フィルターならば回避する事ができる。  またオートND 機能も搭載している為、移動ショットのような周囲に気を遣いながらの撮影でも、カメラマンはフレーミングと足場だけに集中できるのが良い。
ND フィルターに関しては、ダイアルツマミが少し回しにくいと感じた。デザイン的には格好いいのだが、誤操作防止のガードが大きく、ENG カメラの感覚でいると少し回すのにはコツが要る。

■新型レンズ“E PZ 18-110mm F4 G OSS”
今回実際の現場に投入してみて、使いやすさを実感したのが新型レンズの“E PZ 18-110mm F4 G OSS”だ。初代の FS7 にもキットレンズとして“E PZ 28-135mm”が用意されていたが、Super35mm センサーを搭載した FS7 に取り付けると 35mm 換算で 42~202.5mm となり、自分が想定する現場では使い所が無いと残念に思っていた。しかし、今回の新型レンズは 35mm 換算で 30.6~187mm となり、ややワイド端に物足りなさを感じるものの、ENG ロケ的な現場で使い易くなった。さらにズーム機構が、従来のサーボ式からメカニカル機構になり、ズーム操作のタイムラグが解消された。やはりキビキビと画角が決められるメカニカルズームは使っていて気持ちが良い。
また、レンズ自体の機構ではないが、レンズマウント部にレバーロック式を新たに採用。従来は、E マウントレンズ自体を回転させてカメラに固定する必要があったが、FS7 II では、B4 マウントやPL マウントのように、カメラ側のマウントに回転ロック機構が備わり、レバーロックを回す事で固定ができるようになった。これにより、持ちにくい大型のレンズを回転させたり、リグやフォーカスフォローギアなどで武装した状態でも、レンズの脱着が容易になる。ただし、B4マウントやPLマウントのロック機構とは回転方向が反対になっているので、それらのマウントに慣れているユーザーは注意が必要だ。

■画質
FS7 II の画質は基本的には、初代FS7 からCMOS センサーや映像プロセッサーに更新が無いため、同じだと聞く。今回のテストではXAVC Intra 600Mbps/3840×2160pix/59.94P で収録し、FS7 IIの本体再生にて49 インチ4K テレビ(TOSHIBA 49Z700X)で視聴した。
再生された映像は圧倒される情報量で、所有の4K テレビの性能を初めて見た気がしたぐらいだ。ワイド端でのビル群の情報量は多く、エッジがしっかり立って、前後のビルの位置関係も描き分けている。細かなディテールも再現されており、ノイズに埋もれるような事も無い。レンズの倍率が6.1 倍なので、遠方まで寄る事はできないが、テレ端の映像であってもキレは良く、HD の編集プロジェクトでピクセル等倍にまで拡大しても違和感なく利用できるクオリティーだ。
また S/N も優れており、拡大しても目立ったノイズが出て来ない事に驚いた。低照度時においては、例えば屋内撮影時にゲイン0dB ではレンズの明るさがF4.0 という事もあってか感度不足が気になったが、18dB 程度までゲインアップを行っても、大きく映像が荒れる事が無く、ディテールもしっかりと残っており常用可能な品質だ。

■XQD
FS7 II が採用するメディアは、XQD メモリカードである。SONY の業務用ビデオカメラが最初に XQD を採用したのは4K ハンドヘルドカメラの“PXW-Z100”だったと記憶するが、現在のところXQD 対応ビデオカメラは、FS7 シリーズと Z100 という3 機種に留まっている。その点で馴染みの薄いメモリカードであるが、高速転送に対応したメモリカードとして、コストパフォーマンスは悪くない。最大読取 440MB/s、最大書込 400MB/s を実現する SONY のXQD G シリーズは、256GB でも実売5 万円程度である。また、PC にXQD 内のデータを転送する為に必要なリーダー“MRW-E90”は、USB 3.1 Gen 1 に対応しており、価格は6 千円足らず。実際に、編集用PC に内蔵しているシングル構成のSSD へのデータ転送を行ってみたが、270MB/s 程度での高速転送ができ、満足のいく結果が得られた。

■まとめ
今回、FS7 II をお借りしている間に、1現場だけ実践投入する機会があった。撮影自体は 4K で行う必要は無く、またクライアントの編集環境が 4K に対応しないので収録はHD フォーマットにて行った。それでも FS7 II の素性の良さは実感できた。  Super35mm センサーによる適度なボケ味やS/N の良さは映像を上品に見せる事ができた。カメラマンとしても、違和感なく操作できる ENG カムコーダの感覚で扱え、撮影現場でのストレスは少なかった。この標準構成に、さらに“VCT-FS7”や“XDCA-FS7”を追加すれば、より一層ENG スタイルに近づけられる事から、導入するなら是非その一式で欲しいと考えてしまう。
ところで、今回のテスト使用や現場投入では音声は必要の無い条件だったので、あまり気にしていなかったのだが、FS7 IIは本体に内蔵マイクが無い。付属品にも含まれておらず、外部マイク利用かライン入力を行わないと音声が入らないあたりは、制作用もしくはシネマ的なカメラであると感じたが、簡易でも良いので内蔵マイクも搭載されると、よりENGの現場に馴染むと思う。例えば、インサート撮影をしたいだけなので、わざわざ別立てのマイクを用意する必要は無いが、キャプションとしてのガイド音声は欲しかったりするからだ。
FS7 II は、型番からも分かるように 初代FS7 からのマイナーチェンジ機ではあるが、細かな点で改良が施されている。これらの改良点は、現場のユーザーの声を聞いてのブラッシュアップの結果である。画質だけで比較すれば差がない事から、値段が下がり始めた初代FS7 を選択するというのも1 つの手だが、映像制作は“画質”だけではない。カメラの取り回しや使い勝手が、制作工程全体に影響を及ぼす事もある。今回の改良は、従来機のちょっとした使い勝手の悪さを、ちょっと改善したに過ぎないかもしれないが、それが大きく現場でのハンドリングを左右する。直接カメラを触るカメラマンには大きな影響として顕れるだろう。その点でも新しい FS7 II は魅力的で、様々な現場に対応できるオールマイティーさを持った、より従来型のENG カメラに近い機体として今後とも注目していきたいと思う。(宏哉)