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Vol.026 SONY PXW-Z190 試⽤レポート

SD 時代もHD 時代も、ビデオカメラのプロシューマー/業務レンジ機でハイエンドモデルと⾔えば、画素数の違いこそあれ 1/3 インチイメージセンサーの3 板搭載モデルが君臨してきた。このフィールドでの 1/3 インチ機は、謂わば放送⽤での 2/3 インチ機と同じポジションにあると⾔える。それほどに⻑年の標準規格として認識されてきた。
この1/3 インチというセンサーサイズにおけるカメラ筐体のサイズ、レンズ倍率、感度、価格――が1 つの基準値でもあり、業務レンジで馴染みのある基本スペックがいつの時代も競われてきたと認識している。
そして、4K 時代。いよいよ 1/3 インチセンサー3 板搭載モデルが登場した。それが、SONY PXW-Z190 である。
■PXW-Z190
特徴は、新開発の4K 60p 対応の 1/3 インチ Exmor R CMOS センサーを3 板で搭載し、光学25 倍を実現している点だ。焦点距離は35mm 換算で28.8mm〜720mm。1/4〜1/128の電⼦式可変ND フィルターを搭載しているのも最近のSONY 機の標準的な仕様だ。
姉妹機とも⾔えるPXW-Z280 と同様、デュアルMI シューで同社のワイヤレスマイクをケーブルレスで接続して、同時にビデオライトの点灯をカメラと連動させるという運⽤も可能。
さらに4ch オーディオ⼊⼒にも対応し、内蔵マイクとXLR とMI シューをそれぞれの⾳声チャンネルに割り当てて収録することができる。ただし、⾳声ボリュームダイアルは2ch分のみ。また、インスタントHDR ワークフローもサポートし HLG による 4K HDR 撮影にも対応する。S-Log が搭載されていない点は注意だ。収録メディアは SD カードに対応しダブルスロットで同時記録やリレー記録などを⾏える。記録フォーマットは、XAVC-Long による4K 撮影の他、MPEG HD422* や DVCAMに対応するなどマルチフォーマット記録機となっている。
*2018年12月予定のバージョンアップと別途オプションライセンス「CBKZ-SLMP」の適用が必要。
■現場での試⽤
さて、実際に現場で使ってみる。まずは筐体のサイズ感と重量だ。本体外⼨は、公称190.0mm × 202.0 mm × 419.7 mm でハンドヘルド機としては⼤型だ。ずんぐりむっくりな印象だが、前後のバランスは悪くない。そして、気になる重量だが、オペレーション重量は⼩型のバッテリー“BP-U30”装着時で 2.8kg となっている。もちろん⼤型バッテリーを付けると3kg 台に突⼊していくのだが、意外と重くない。重⼼やグリップ形状の改良でカメラ本体は⼤きいが持ちやすい⼯夫がされていると感じた。また、カメラの⾒た⽬に反して本体重量は軽量で 2.3kg しかない。よくよく⾒てみると筐体内部には空間が多く、排熱のためのクリアランスが確保されていることが分かる。次に、光学25 倍ズームレンズのレスポンスの良さに気が付く。ズームリングの仕様はいわゆるグルグルリングだが、リングの動きにズームが⼩気味よく連動する。NX5 などと同等レベルのレスポンスだと思って良いだろう。気になったのは、リングを使った場合のズームの動き始めだ。個体差もあるのかもしれないが、リングの動き始めが固く引っかかりがある感じで、カクッとリングが動くためズーム頭の動きも少し荒い感じになってしまう。ただし、ズームシーソを使えば動き出しも滑らかだ。レンズのワイド端は28.8mm で従来の1/3 インチ機種と⽐較して「やや広くなる」数値だが、実際に使ってみると、この僅かな数字の違いが⼤きい。流⽯にワイコン無しでOK とは⾔い切れないが、標準レンズだけでも従来以上のワイド感が得られる感覚がある。少し気になったのが、ワイド端であってもコントラストの⾼い部分には、ややカラーフリンジが出がちで夜景撮影などではその傾向に注意したい。
⼀⽅、光学25 倍のテレ端は、予想以上に健闘していた。望遠側でも極端に解像度が落ちること無くシャープな映像を描く。気になるようなボケや滲みもあまり無くスッキリとした印象だ。4K 撮影であってもワイド28.8mm からテレ720mm まで全域を使った撮影が出来るというアドバンテージは⼤きい。次に「感度」だ。1/3 インチセンサーということで、明るさ的には不利になる。HD 末期のハンドヘルド機の感度の⽬標値が、F11 やF12 という 2/3 インチENG カメラに⽐する値だったため、4K 時代になってもその数値・明るさが求められるのは、メーカーが苦労するところだろう。標準設定の状態だと、Z190 の映像は暗めだ。屋外やスタジオなど⼗分な光量があるロケーションでは勿論何の問題も無いが、普通の部屋の照明や夜間撮影などでは、明るさが不⾜しているように感じるだろう。その際は、メニュー設定でHigh Sensitivity(⾼感度)モードを有効にすることで明るさを稼ぐことができる。High Sensitivity モード有効時はフレームレート60p でF11(2000lux)を実現するため、使い慣れた明るさになる。ただし、引き換えに S/N は悪くなる。全体的にノイジーになるので折⾓の4K の精細感がスポイルされがちなのは残念だ。
撮影するシチュエーションによって、High Sensitivity モードの有効/無効をしっかりと使い分けて撮影に臨んだ⽅が良いと感じた。また、⼩絞りボケにも従来以上に注意が必要だ。1/3 インチという⼩さなセンサーサイズの中に4K 解像度を実現しているため、HD 機の感覚よりも⼩絞りボケが起き始めるアイリス値が早いと感じる。だが、この問題はアイリスで絞り込むようなことをせず、ND フィルターを使って適度に減光することで、しっかりとアイリスワークを管理すれば⼩絞りボケは避けられる。F5.6 前後を基準に、⽐較的アイリスは開け気味で使⽤するのが、Z190 の使い⽅になるだろう。幸い、電⼦式可変ND フィルターが搭載されているので露出調整が柔軟にできるのも、この機種のメリットだ。

■まとめ
PXW-Z190 とPXW-Z280 の登場で、いよいよ 4K 60p ハンドヘルドが実⽤実践の時代に突⼊したと⾔える。筐体サイズやレンズ倍率などは、HD 後期のスペックを維持しつつ、4K化させているところに、メーカーの意地と技術⼒を感じる。そのお陰でユーザーはHD で構築したシステムや撮影感覚をリセットする必要なく、4K 機を現場にリプレイスすることが可能だ。もちろん、ここが終着点では無く 4K 60p ハンドヘルド機にとっては熾烈な開発競争の始まりでもある。まずは、筐体サイズの縮⼩化。やはり HD で標準的な NX5 やNX3 クラスのサイズ感で 4K 60p を実現して欲しい。その際、光学倍率は20 倍でも⼗分だ。そして感度。High Sensitivity モードにより感度は稼げるがS/N の低下は否めない。標準モードでの感度の向上が課題だ。これは HD ハンドヘルド機が出た当時と同じ状況だ。しかし、HD 時代は10 年以上を掛けて現在のデファクトスタンダードなスペックにまで進化してきた。4K ハンドヘルド機の歩みは今始まったばかりである。これからのカメラの進化が楽しみであり、各メーカーの技術⼒に期待したい。(宏哉)