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Vol.023 プラネタリウムの地域コンテンツの可能性


プラネタリウムの館内(投影映像は合成) 写真提供:飯田市美術博物館

飯田市美術博物館の取り組みを取材して

この連載では主に「映像教育」「地域」「コンテンツ」をキーワードで書いています。そこで常々興味深いと感じ、いつか記事にしたいと考えていたのが「プラネタリウム」についてです。私の友人が長野県の飯田市美術博物館の学芸係でプラネタリウムを担当していることもあり、今回取材することが叶いました。

 

■プラネタリウムの歴史とこれから


日本には1937年に大阪市立電気科学館にカール・ツァイス社製プラネタリウムⅡ型第25号機が導入されました。その後、五藤光学研究所や千代田光学精工(現在のコニカミノルタ)が製品化し全国の科学館に普及していきます。その後も改良が続けられ、またデジタル投影機を活用し表現が多様化していきます。2011年に名古屋市科学館に世界一大きいドームを持つプラネタリウムの完成が話題になりました。2012年4月に川崎市青少年科学館が最新型MEGASTAR(メガスター)を設置してリニューアルオープン、5月には「コニカミノルタプラネタリウム“天空”in 東京スカイツリータウン」のオープンと続きます。5月21日に金環日食が観測できることもあり、これらの話題は益々盛り上がっていくでしょう。

 

飯田市美術博物館プラネタリウム天歩の取り組み


飯田市美術博物館プラネタリウム天歩は、2011年3月に単眼式デジタルプラネタリウム(コニカミノルタ製スーパーメディアグローブⅡ)にリニューアル。直径12mドームで90席を擁しています。地域の魅力を再発見できるオリジナル番組を制作しており、2011年には6本を制作(制作:飯田市美術博物館、和歌山大学観光学部)。
鑑賞した番組の中から2本を紹介します。

 

(1)「菱田春草~永遠のときを超えて~」(10分
飯田出身の日本画家菱田春草の生涯と作品を紹介する番組。飯田市美術博物館が所蔵している春草の絵が全天に投影され、繊細で精彩な美しさに圧倒され、しかも立体的に見えてきてとても贅沢な体験でした。

 

(2)「遠山霜月祭~太陽と命のよみがえり~」(10分)
遠山郷に古くから伝わる祭りを紹介する番組。毎年12月に舞や祈祷が夜通し催されます。このような民俗映像資料をプラネタリウム番組にしたのはおそらく日本ではじめてでしょう。祈祷者の立ち位置や、神社の中に差し込む光が立体的に見えるので、その場にいる臨場感があります。太陽が沈むコマ送り映像が全天に投影され、さもそれを見て日々を過ごしているような気持ちになりました。

 

ほかに「日本には存在しない」と言われていた「隕石クレーター」を自然部門担当者が25年にわたる調査で発見したことを紹介する番組など、どれもここでしか見られない、知ることができない番組でした。改めて言及しておきたいのは、この番組の制作は制作会社ではなく、博物館と和歌山大学観光学部であることです。プラネタリウム番組にするために、特注の魚眼レンズカメラで撮影して、市販のソフトウェアで編集しています。ということは、いずれプラネタリウム用のカメラがあれば誰でも(ドームに投影するというのは精緻な調整が必要なので、正確には誰でもできるということではない)コンテンツを制作可能になるということです。

 

感想

プラネタリウムは見るのではなく体験するものだと思います。例えば、その日の星空案内をする専門員による生解説は、その場でしかできない体験です。何より満天の星を見上げる体験こそプラネタリウムの醍醐味です。見えないだけで私たちの頭上にはこの星空が常にあります。プラネタリウムを見て感動するのは、時空を超えたつながりを感じたとき、と私は考えます。宇宙に関心を持つことは「私たちはどこから来てどこへ行くのか」という人間として根本的で永続的な問いを失わないことです。星と地域とそこに立ち会う人々を、時空を超えてつなげていくことが、プラネタリウムの役割になっていくと思います。