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Vol.026 日本映像学会 第38回全国大会

2012年6月2日(土)、3日(日)に九州大学 大橋キャンパスにて、日本映像学会(注1) 第38回全国大会が開催されました。「—映像の拡張性を考える—スマートフォンからソフトウェアアートまで」。のテーマのもと、基調講演やシンポジウム、研究および作品発表が行われました。

 

基調講演とシンポジウム

映像ジャーナリスト、立体映像研究家の大口孝之氏と、山口情報芸術センター(YCAM)キュレーターの阿部一直氏の基調講演が行われました。大口氏は「3Dブームはこのまま終わってしまうのか?」というテーマで、3D映像のさまざまな技術と流行現象の歴史に触れながら、近年「アバター」以上のコンテンツが出て来ないのは「そもそも日本では3Dは普及しないのではないか」という問いを立て直す必要があると言及しました。阿部氏は、YCAMがこれまで展示発信してきたアーティストとのコラボレーション作品を紹介しました。

シンポジウムは基調講演の両氏と、江口カン氏(KOO-KI代表、映像ディレクター)と中村俊介氏(株式会社しくみデザイン代表取締役、九州工業大学特任准教授)の若手映像クリエーターを交え、「映像の拡張性」についてディスカッションされました。江口氏は「多様な媒体でCMが展開されるとその分予算が少なくなるが、コンプライアンスから離れて表現的に自由になる」と実作に触れながら語り、中村氏は、デジタルサイネージを活用した広告を通し「新しい体験を提供したい、ということがものづくりの根本にある、カメラで面白いことをやるというのが文化になればいいと思っている」と語りました。ほかに、映画とメディアアートの間の評論家がいないことの問題が提起されました。

 

研究および作品発表

映像学会のユニークなところは、作品発表があることです。ジャンルを問わず映像作品の上映や、メディアアート作品の展示も可能です。作品についてのプレゼン発表の時間もあり、制作者本人と意見交換ができます。その中でも、瀧健太郎氏(NPO法人ビデオアートセンター東京代表)が監督したドキュメンタリー「キカイデミルコト−日本のビデオアートの先駆者たち—」(2011/HDV/80分)の上映とレクチャーは興味深かったです。この作品は60年代半ば初期ビデオアートの37作品を交え、アーティストやキュレーター、評論家など28人にインタビューし、現在に至るまでの日本のビデオアートの系譜がわかります。昨年2月に川崎市市民ミュージアムで公開上映されたとのことですが、今後も多くの場所で公開され続けることと、パッケージ化を望みます。

 

プチリポート

担当講師である昼間行雄先生の紹介で、聖徳大学の授業「マスメディアと児童文化」(児童学科児童文化コース3年生の必修授業)の取材を行いました。学生たちは6人で1グループとなり、SONY TRV950などのカメラを使い「架空のクラブ活動を紹介する」という課題で制作します。2回ほどの授業時間で撮影します。編集環境がないので、OKカットのタイムコードを書き出し、昼間先生が編集したものをDVD視聴します。昼間先生はカメラの起動ボタンなど以外は敢えて教えず、撮影は学生たちに任せていました。学生たちは「このアングルの方が伝わる」「もっとはっきり話した方がいい」とトライ&エラーを繰り返しながら楽しそうに学んでいました。極めて素朴な感想なのですが、改めて「映像に自分が写るのは楽しい」「みんなと映像をつくるのは楽しい」と感じました。映像教育というと、得てして「映像コンテンツ」としての完成度や、技術の習得、アプリケーション操作の習得などが中心になりがちです。しかし学生たちの笑顔を見ていると、それが学びの場で一番重要なものだと感じました。

 

注1:日本映像学会は1974年9月に創立され。事務局は日本大学芸術学部映画学科内。Webサイト→ http://jasias.jp/